提供 菅さん
ヤブニッケイ (藪肉桂 常緑高木 クスノキ科)
花期6~7月 果期11~12月
山々の紅葉が一段と鮮やかさを増す時節に林の中などで小指の先ほどの黒っぽい光沢のある実を付けたヤブ ニッケイに出会うことがあります。間近に実を見てみると黒く見えていたものが、わずかに青味を帯びた藍色ということが分かり、その美しさに感動することになります。クスノキ科の果物にアボカドがありますが、ヤブニッケイの熟す前の実は濃い緑色でアボカドを思わせる色あいです。アボカドの実の熟しきったものは黒っぽくなるので、ヤブニッケイの黒っぽくなった実も食べられるのではないかと生来の卑しさから口に入れてみたことがありますが、残念ながら食べられるようなものではありませんでした。
クスノキ科の葉には基部辺りから3本の主脈がでる三行脈の形をしたものがいくつかありますが、ヤブニッケイにも同様に見られ、この種を同定する際に役立ちます。葉を揉んで嗅いでみると芳香が感じられ、この香りはニッケイと同じシナモンの香りですが、ニッケイほどには香りが強くないところからあまり役に立たないという意味でヤブと付く名になったようです。それでもニッケイほどの強い香りではない優しいマイルドな香りを活かした用途も色々あるようです。
煮込み料理の際に香りづけに使われる月桂樹(ローリエ)もクスノキ科ですが、それと同じような使い方がされることもあり、お風呂に入れて入浴剤代わりやお酒に漬け込んで香りを楽しむ使い方がされることもあるとか。
和のハーブとして通信販売を行っているところに意外な使い方が紹介されていました。そこではお米と一緒に炊いてヤブニッケイライスや炒め物のほかに、パンやクッキーに練り込んだり、バニラアイスのトッピングにもオススメとありました。
葉を蒸留して得られる希少精油には美容効果もあるとのことで、ここまで利用価値があればヤブの名は返上させてあげたくなりますね。