菅さん提供
ネムノキ(合歓木 合歓の木 落葉高木 マメ科)
花期7~8月 果期10月
白くしなやかな絹糸を何本もまとめ、先端の方から牡丹色に染めたような花を咲かせるネムノキ。
元の方に行くにしたがって染まり具合は次第に淡くなり、最後の方は染まらずに全体を束ねたよう形になります。ネムノキを英名でsilk treeと言ったのは実に言い得て妙です。
ちなみに、「この~木なんの木気になる木」でおなじみの日立グループのCMに出てくる木もネム
ノキの仲間で、この木の英名はモンキーポッド(monkeypod)、レインツリー(rain tree)と呼ばれてい
るようです。
先端が広がって扇形に見える花は一つに見えても実際は10個~20個の花が集まったもので、蕾
の状態の時に見れば数の多さがよく分かります。
牡丹色の糸状のものはすべて雄しべで、その中に先端まで白い雌しべが何本かありますが注意深く
観察しないと分かりません。雄しべばかりが目立ち、マメ科の花としては異端の存在の樹木ですが、
実ができてくるとマメ科らしく見えてきます。
日が沈むころになってから開くという花は、甘い香りを漂わせるそうです。香りに引き寄せられて
やって来るのは主に夜に活動する蛾の仲間と言うことですが、雄しべの束に邪魔されずに奥にある蜜
を吸うには、長い口吻を持つ蛾にとっては訳のないことのように思えます。
ネムノキの名の由来は、夜になると葉が合わさって閉じる様子が眠るように見えることからきたよ
うです。なぜこのような運動をするのかはまだ良く分かっていないようですが、この就眠運動は万葉
の昔から身近なものとして歌にも詠まれているようです。
「甘酸っぱい青い果実にやわらかなパウダリー感のある合歓の花の香り」。これは合歓の名称を持つ
ある香水の香りのイメージを表現したものからの引用です。開花する夕方から夜にかけてが一番良い香
りを放ち、朝にはほとんどなくなっているというこの花の香りには、残念ながらいまだに出会えてい
ません。
ネムノキの花ことばの一つは夢想。昼でも妖艶さの漂うこの花の香りに宵闇の中で出逢えば、どんな夢を思い描くことになるのでしょう。