菅さん提供
クズ(葛 つる性木本 マメ科)
花期8~9月果期11~12月
クズの細いツルが樹木に絡まっている様子はいかにも草、一方年を経たものは地際から黒くごつごつした10cm以上もあろうかと思われる太い茎を伸ばし、その姿を見るともはや樹木。実際に図鑑や文献によってつる性多年生草本とされることもあれば、つる性木本とされることもあります。
ハギ、ススキ、キキョウ、ナデシコ、フジバカマ、オミナエシと並んで秋の七草の一つとして謳われるのがクズ。秋の七草は奈良時代の歌人である山上憶良(やまのうえのおくら)が万葉集で詠んだ2首の和歌が由来となっているという。
春の七草は口にするもので、秋の七草は目で楽しむものと昔からよく言われていますが、山上憶良がこれらの花を取り上げて詠んだときの心境はどんなものだったでしょう。官僚として政治や行政に携わっていた当時、諸々の煩わしさから離れて秋の野に咲く花を季節の移ろいを感じながら慈しむように愛でたのではないでしょうか。
そんな花の一つのクズが今では爆発的に繁茂して社会問題になっているとは、天上の山上憶良が知ったらさぞびっくりすることでしょう。
かつて農耕で牛馬を飼育していた時代には刈り取って持ち帰り牛馬の飼料とされ、山ではツルを薪の結束に用いるなど、昭和の半ば頃までは田舎では普通に見られる光景でした。古くには茎の繊維から布を織って日常に使わていたようです。このように人間の管理下で活用されていましたが、現代になって利用価値が減り、放置されたことで厄介者へと変貌してしまいました。日本から北米に渡ったクズが、そのあまりの繁殖力の強さにグリーンスネイクと恐れられ、駆除の対象になっているそうです。
繁茂するクズの問題とは、その旺盛な繁殖力で樹木などの他の植物に覆いかぶさり、日光を完全に遮断します。そのため他の植物は光合成ができずに枯死してしまい生物多様性が損なわれます。近年人里に出没する熊にとっては格好の隠れ家ともなっています。
愛でる対象から忌み嫌われる存在となってしまった感のあるクズですが、高級和菓子に使われる葛粉はサツマイモなどから作られる葛粉とは別格扱いで本葛と呼ばれる高級品です。
本葛は手間暇の産物で、地中深くにある直径が10cmほどもあるゴボウを太くしたような根を掘り起こし、砕いてから水に何度もさらして澱粉を取り出す作業は骨の折れる仕事です。
本葛の有名産地は奈良県吉野地方で、そこの国栖(くず)の地名が葛粉や植物自体のクズになったと言われています。
厄介者ではあるものの赤紫の花は観賞価値は十分で良い香りもします。葛饅頭の一つでも手にして秋の野に出てクズを愛でるのもまた一興かも。

