菅さん提供
マツグミ(松茱萸 常緑小低木 オオバヤドリギ科)
花期7~8月 果期5~6月
ヤドリギと言えば、葉を落とした冬枯れのサクラやケヤキの枝にぽつんと、あるいはぽつんぽつんと緑の丸い塊を見ることがあります。冬の風物詩ともいえるヤドリギは季語にもなっていて俳句や和歌に詠まれてきました。そのように慣れ親しまれてきたヤドリギの仲間でありながら、人目に触れず奇麗な花を咲かせるものにマツグミがあります。
ヤドリギは広い意味ではヤドリギ類 の全てを指して言う場合と、狭義には前述のように落葉広葉樹のみを宿主とする一種を指すこともあります。
マツグミが人目に付きにくいのは落葉樹ではなく、アカマツやクロマツ、モミ、ツガなどの常緑針葉樹に寄生して緑の葉の間に紛れ込んでしまうことにあります。樹形がヤドリギのように丸くならないことと合わせて、いずれの樹木も高木になるため人目に付かないのはなおさらです。ちなみに落葉樹に付くヤドリギが丸くなるのは風の影響を最小限にするためだそうです。
マツグミの葉の特徴は革質の細長い形でヤドリギの葉に似ていますが、花の形状は全く異なります。ヤドリギの花が1cmにも満たない黄緑色で目立たないのに対してマツグミの花は1.5cmほどの筒状で赤く、その独特の形状は、長いくちばしをもったハチドリがよく訪れる南国の花を思わせます。
マツグミの名はマツに寄生し、果実がグミ科のグミに似ているところからついたと言われています。果実は長さ約5mmほど、楕円状の球形で花の後の翌年5~6月に赤く熟します。他のヤドリギの果実と同様に中の種子の周りは粘液質で、鳥に食べられた果実の種子は、粘液により粘っこくなって糸を引くように鳥のお尻から出る糞とともにマツなどの枝に付着することで分布を広げることが知られています。
昔は果実のネバネバを子供がガムの代わりに噛んで楽しんだと言う話はあちこちにあるようですが、間違って飲み込んでしまったら、後々お尻が大変なことになったのではと変な想像をしてしまいます。
0 件のコメント:
コメントを投稿