菅さん提供
クロガネモチ(黒鉄黐 常緑高木 モチノキ科)
花期5~6月 果期10~1月
緑の葉の間に鈴生りの赤い実をつけた高木を真冬の山の中で目にすることがあります。遠目でも赤い実が良く分かる樹木であればモチノキ科のクロガネモチです。この時期にはクロガネモチより少し大きめの赤い実をたくさんつける同じモチノキ科のナナミノキやモチノキ、タラヨウもありますが、クロガネモチが枝先から実をつけるのに対し、他は枝先からやや後退したところから枝に沿うような形で実をつけます。そのためクロガネモチの実は直径で5~6mmと小さめでも遠くからでも良く目立つというわけです。
クロガネモチのクロガネは漢字では黒鉄で鉄を意味し、葉柄や若い枝が黒柴色をしていることでそのような名になったといわれていますが、葉が乾くと鉄色になることからクロガネモチと言われるようになったという説もあります。鉄色と言われても漠としてイメージが湧いてきませんが、切り倒された木の葉は日数がたてば黒っぽくなってきますのでそのことを指しているのでしょう。
初夏に白、あるいは薄紫色の花を咲かせます。小さすぎて観賞価値はありませんが、花の少ない冬場に美しい赤い実をつけることから公園や庭木に利用されます。庭木に利用される理由がもう一つあります。クロガネモチの名が苦労のない金持ちに通じて縁起が良いというのがその理由です。
枝先いっぱいの赤い実を見ればハッピーな気分になれそうですが、ある時知人宅の住人から、よその木にはたくさん実が生るのに我が家の木は大木になっても一つも実がつかないという話を聞かされました。雌雄異株のため実が生るのは雌の木に限られますので知人宅の木は雄株だったようです。
この縁起木も所変われば品変わるで、九州の一部では材が柔らかく腐りやすいことからイモクソと呼ばれているようです。トリモチが採れる樹皮の独特の匂いも関係があるように思われます。
ところで、黒鉄の鉄の字は金を失うと書きます。これを嫌ってのことか黒金の字を充てることもあるようですが、これとて政界で取りざたされることのある黒い金のように良いイメージばかりではありません。
美しい木姿が目に入ったときには、労せずして金儲けすることを考えるより、率直に美しいと感じる感性を養うようにした方が良さそうですね。
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