菅さん提供
バッコヤナギ(跋扈柳 婆っこ柳 落葉高木 ヤナギ科)
花期3月 果期5月
寒さの残る3月の雨上がりのとある山道を通りかかった時のこと。道の上に白っぽい芋虫のようなものが幾つも落ちているのが目に留まりました。近づいてよくよく見ると芋虫に見えていたものは花粉を出して役目を終えた柳の花で、雨水を含んで重くなり落ちてきたようです。
柳といえばネコヤナギやシダレヤナギのような水辺に好んで生える柳を思い浮かべますが、山道で目にした柳は水辺からは遠く離れた日当たりのよい山の中腹で、その時もこんなところに柳があるのかと思いながら見上げると、高い木の梢に幾つかの花が残っていました。
柳の仲間は細く長い葉をもつものが多く、そこから柳葉包丁と言われる包丁もありますが、この木ではクヌギやクリの葉に似たやや幅のある葉をつけています。
帰宅後に図鑑などで調べてみると葉の形やずんぐりした花穂、樹皮に縦に入る幾筋もの割れ目模様などからバッコヤナギであることが分かりました。
バッコヤナギという変わった名前の由来は幾つかあるようですが、漢字表記では跋扈柳を充てたものが目につきます。跋扈すると言えばわがもの顔で振る舞いのさばることで、バッコヤナギがのさばりはびこっているという情報は寡聞にして耳にしたことがなく、バッコの音を単純に跋扈に充てただけのようにも思えます。
東北地方では生活の中で回りのものに親しみやかわいらしさを込めて表現するときに娘っこや嫁っこのように語尾に「っこ」をつける習慣があり、どじょっこやふなっこは歌にもなっています。柳の種子は熟すと綿毛に包まれた状態で風に乗って散布されますが、その綿毛がお婆さんの白髪に見えることから婆っこ柳と言われるようになったという説もあってこちらはなるほどなと思わされます。
綿毛の付いた柳の種子が風に乗って 漂うさまを俳句では柳絮(りゅうじょ)飛ぶと表現して春の季語になっています。
柳は雌雄異株で種子をつけるのは雌の木に限られますが、バッコヤナギに関しては跋扈本来の意味からは程遠く、小生の山歩きの行動範囲の中では雄の木一本を目にしただけで未だ雌の木には巡り合えておりません。薫風に舞うバッコヤギの柳絮をいつかは見てみたいものです。
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