菅さん提供
イブキシモツケ(伊吹下野 落葉低木 バラ科)
花期5月 果期7~8月
春には黄色の花をつける草花を多く目にしますが、五月晴れの青く澄み渡った初夏の空の下ではガマズミ、ウツギ、カマツカ、ノイバラ、ホオノキなどの白い花をつけた木々が目立つようになります。この時期になると花の間を飛び回る虫達も活発になり、蜜集めに精を出すミツバチの羽音も一段とにぎやかに聞こえます。
一説によると、梅雨入りの季節に緑色を増した自然の中で白色の花が多いのは、背景の緑とのコントラストが高く、昆虫に花の存在が良く分かるようにするためではないかといわれています。
日本一大きな花をつけるホオノキは別にして、ガマズミ、ウツギをはじめ上記の花は一つの花はどれも小さく目立ちませんが、梢の先に寄り集まって咲くことで昆虫に目立つようにしているようです。イブキシモツケもそのように小さい花をまとまってつける樹木で、一見するとコバノガマズミやミヤマガマズミのようにも見えますが、葉に触れると密生した毛によりザラザラした感触が伝って来ることと葉の形状で区別は容易です。
名称にイブキとあるように薬草の宝庫として知られる滋賀県と岐阜県にまたがる伊吹山に多く見られたことからイブキシモツケと名づけられたものですが、近畿以西の本州、四国、九州に広く分布するようです。分布域としては広いものの岩場を好む性質で局所的にしか見られません。後のシモツケは、昔の下野国(しもつけのくに=現在の栃木県)に多くあったことから名づけられた同科同属の赤い花をつけるシモツケに花の形がよく似ていることに依るものです。
同属で草本のセイヨウナツユキソウには鎮痛の薬効があり、抽出された成分がアスピリンの名の元になったそうです。となれば、薬草の宝庫に多くあると言われるイブキシモツケにもかなりの薬効があるのではと調べたところそれらしい情報は皆無でした。それでも他の植物が敬遠するような岩場で美しい花を咲かせるイブキシモツケにはまだ解明されていない効能があるのではないかと思ったりもします。
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