提供 菅さん
ハンショウヅル(半鐘蔓 つる性低木 キンポウゲ科)
花期 6月 果期 10~11月
つる植物は山の仕事に携わっている人から見れば厄介者。美しい花を咲かせる藤にしても、植林した樹木に絡みつき、葉で覆い尽くして成長を妨げたり、幹に絡みついて変形させたりして商品価値を損ねるので、林業では「つる切り」は大事な仕事の一つです。
ハンショウヅルも林縁で見られるつる植物ですが、他の植物に巻き付いて痛めつけるほどには太くならず、巻き付き方もつる本体を巻き付けるのではなく、細く長い葉柄を絡みつかせながら成長する華奢な印象のつる植物です。
花柄も長く、先端に長さ3cmほどの花を一輪下向きに付けます。ハンショウヅルの名前の由来はこの花の形が半鐘に似ていることによるものです。半鐘はお寺で見る釣鐘を小さくしたようなもので、昔は主に火の見やぐらの上部に吊るして火事が起きたことを住民に知らせるためのものでしたが、現代では防災無線やサイレンなどに取って代わられ目にする機会はほとんどなくなりました。この慎ましやかに並んで見える花を鐘に例えるなら、ジャンジャン打ち鳴らす半鐘よりも、澄み切った美しい音色のハンドベルが似合うように思います。
暗紅紫色の花には花弁がなく、花弁のように見えるのは萼で4枚から成っています。開花時には花の先端から三分の一ほどがまくれ上がるように開くだけで、同じように4枚の萼で構成される花を持つ同科のセンニンソウやボタンヅルのようには平開しません。花の後にできる実はセンニンソウやボタンヅルとそっくりで、寄り集まった一つひとつの果実には長い雌しべの花柱が残っていて、花柱表面にはたくさんの毛が羽毛のように生えていて風で飛ばされていきます。
学名にClematis japonicaとあるように日本原産のクレマチスです。つる性植物の女王と呼ばれる園芸種のクレマチスの多くが大型の花で見ごたえがあるのに比べるとハンショウヅルはちょっと地味な印象があるのは否めません。別の日本原産のクレマチスで大きな花を持つカザグルマは絶滅危惧種で未だ出会ったことはありませんが、たくさんの花をつけたハンショウヅルに出会ったときには、爽やかな音色のハンドベルの演奏を思い浮かべながら鑑賞するのもよいかもしれませんね。
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