菅さん提供
ヤマツツジ (山躑躅 半落葉低木 ツツジ科)
花期4~5月 果期8~10月
躑躅色とは鮮やかな赤紫の色のことで古くからある日本の伝統色の呼び名の一つです。万葉集にもこの色の表記がみられるということから、躑躅は古くから人々に広く親しまれていたことがうかがわれ、現在でも暖かくなってくる時節には街中の公園などでは必ずと言っていいほど花が見られます。中でも日本庭園には切っても切れない樹木の一つになっています。
春の野山で躑躅色と言えばコバノミツバツツジを思い浮かべますが、鮮やかさの点ではヤマツツジが格段に勝っています。伝統色の紅緋色(鮮やかな黄みの赤)の花は新緑の中ではいやが上にも目を引きます。林の中で木漏れ日を受けて輝いている姿に出合えばなおさらです。
ヤマツツジの花は昔の人にも他の躑躅の花よりも鮮烈な印象を与えていたと思われるのに、この花の色が躑躅の花の色を代表する躑躅色になりえなかったのは不思議にも思えます。
万葉集の中で詠まれているいくつかの躑躅の歌の中で赤い躑躅を詠んだのは一首だけというところから、他の躑躅と比べると派手過ぎるとも言える花色が、清少納言が枕草子の中で言うところの「しななき心地」(品がない)の花と昔の人にはとらえられていたのかもしれません。
とは言え、ヤマツツジの魅力は鮮烈な燃えるような花色にあります。緑の中でも、青空の背景の中でも、他の花色との共演の中でも目に焼き付くような美しさが感じられます。
この花の花言葉が気になって調べたところ、“燃える想い”で予想した通りのものでした。ちなみに、紫の花は“美しい人”白花は“初恋”で、ピンクは“愛の喜び”とあり、なぜか愛や恋に関するものばかりでした。
ヤマツツジの花は食べることができると知ったのはつい最近のことで、それは酸っぱい味だとか。若かりし頃に食べたなら、初恋の味と言われる甘酸っぱさではなく、ほろ苦く感じたのではないかとその時には思った次第でした。
ヤマツツジと同時期に咲く躑躅にモチツツジがあり、両者の自然交配種に牡丹色に咲くミヤコツツジがあります。ヤマツツジで目が刺激された後には、ミヤコツツジの優しい花色に癒されるのがいいですね。
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