菅さん提供
ホオノキ (朴の木 落葉高木 モクレン科)
花期5月 果期9月
気品と風格のある花は何かと問われれば、真っ先に思い浮かぶのがホオノキの花。日本の樹木の中では最大級の花で差し渡しは優に15㎝以上はあり、片方の手のひらを広げて載せたとしても収まりきらないほどの大きさがあります。枝数が少なく30mにも達してすっくと立つ樹形が、時に森の王者と評されることもあるホオノキにはふさわしい花と言えます。
それほどの大きさの花であれば大量の蜜が得られそうですが、実のところは香りで花粉を食べる虫を呼び寄せる虫媒花で蜜は出しません。その香りは甘い香りと言われますが、高木で高い位置に花をつけるので香りに巡り合える機会はなかなかありません。
花中央の花軸に見られる上半分の赤い部分は雌しべ群、下半分の白い部分が雄しべ群で、開花初日は雌しべは受粉の機能を持ち、その翌日には受粉能力を無くし変わって雄しべが花粉を出して雌性期と雄性期を明確に分け、同一花内での受粉を避ける工夫をしていることが特徴的なこととして知られています。
大きな花にもかかわらずわずか数日で散ってしまう短命な花で、受粉の機会が少ないように思われますが、花の香りには多くの虫たちを呼び寄せる絶大な魅力があるのでしょうか。そうだとすれば一つの木の果実は数えるほどしか付かないのが不思議に思えます。
果実は多数が寄り集まった集合果と言われるパイナップルを細長くしたような長楕円形で長さ10~15㎝ほど。幼果のころの緑色は熟してくると真っ赤になり、その後褐色になって朱色の仮種皮をまとった種子があちこちから顔をのぞかせ鳥たちのごちそうになります。
花が大きければ葉もまた大きく、長さは20~40㎝幅10~25㎝ほどもあり、その大きさから岐阜県の飛騨高山地方に伝わる郷土料理の朴葉味噌に代表さるような食べ物を盛ったり包むのに重宝され、そこから「包(ホウ)の木」の名になったと言われています。枝先に複数の葉が傘のように付くことから英語名ではJapanese umbrella tree。
材は木質が均一で加工しやすく建具や額縁、鉛筆、下駄の歯、刃物の鞘等に利用され、炭は漆器の下塗や中塗の研炭として利用されるそうです。
樹皮は厚朴と言う漢方薬として利用され、消化促進、健胃整腸等の効果があるそうですが、山中である時ホオノキの実を探しているという人に出会いました。薬に使うということでしたが何に効くのかを聞きそびれてしまいました。果実酒にすると言う話もありますが、有毒のアルカロイドの成分があるそうでうかつに手を出すのは避けた方が賢明でしょう。
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