菅さん提供
イヌエンジュ(犬槐 落葉高木 マメ科)
花期5~6月 果期9~11月
真夏の暑い盛りでも山に入るとみずみずしい緑に囲まれて一服の涼感を味わうことができます。木々も花を咲かせるのは一休みとばかりに目に入ってくるのは滴るような緑一色です。
緑滴ると言えば夏の山を形容する言葉で、俳句でも夏の季語として扱われています。そのような緑の中からつんつんと花の軸を伸ばして白い花を目一杯つけた樹木を目にすることがあります。樹木の名はマメ科のイヌエンジュ。花はいわゆる蝶形花と言われるもので蝶が翅を広げたようなマメ科特有の形をしています。この形には仕掛けがあって花の奥に雌しべと雄しべがあり、花の蜜を求めてハナバチなどの昆虫が花に止まって花の奥に頭を突っ込むと雌しべと雄しべが飛び出てきて昆虫のお腹に触れることにより花粉が付着したり、お腹に付いていた他の花の花粉で受粉ができるという仕組みです。
植物名にイヌと付けば人の役に立たないとか見劣りするという意味が込められていますが、イヌエンジュも例外ではありません。エンジュは公園などに植栽されているものを見かけることがありますが古くに中国からもたらされたとされています。花は藤に似てイヌエンジュよりもはるかに観賞価値があり、また、蕾や果実は薬用とされていることでイヌエンジュよりも利用価値があるとされたのでしょう。
エンジュが入ってくるまでは在来種であるイヌエンジュがエンジュと呼ばれていたとも言われていますので、イヌエンジュにとってはエンジュは目の敵ということになりますが、イヌエンジュが役に立たない樹木ということはありません。北海道ではエンジュと言えば今でもイヌエンジュのことでエンジュの名で木材が広く流通しており、この花のハチミツは超高級品だとか。
崩壊地などで他の植物に先駆けていち早く発芽成長する先駆種の性質を持っていて、マメ科特有の根粒菌との共生によって大気中の窒素を固定して土壌を肥沃化し、多くの生物が生息できる豊かな環境を作り出すことにも貢献しています。
春の銀白色の新葉も特筆に値する美しさです。
画像のアップは花の遠景、花のアップ、新葉、果実の順で掲載しています。
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