提供 菅さん
コハウチワカエデ(小羽団扇楓 常緑高木 ムクロジ科)
花期5~6月 果期6~9月
秋も深まると紅葉の話題があちらこちらから聞こえてきます。もみじと言えばイロハモミジがまず頭に浮かんできます。紅葉の名勝地と言われるところで見られるものも多くはイロハモミジのようです。紅葉の代表選手のようなイロハモミジですが、ムクロジ科のカエデ属は日本には27種あるとされ、この数は世界的にみると群を抜く多さだそうです。朝日百科(朝日新聞社発行)によるとカエデ属は北半球の温帯に150種ほど知られ、北アメリカには10種、ヨーロッパには12種とされていますので、日本での数がいかに多いかが分かります。
日本の秋の山々は赤色が際立つのに対して、欧米ではゴールデンリーフと言われる黄色が主体だそうです。日本人の自然に対する感性の豊かさには楓の種類の多さも一役買っているようにも思えます。
27種の中には高地や沢沿いなどの局所的にしか見られないものもありますが、花の形や果実の付き方には樹種によって変化があり、また、独特な樹皮の色合いを持つものなど様々です。葉の形にもイロハモミジのような切れ込みがまったくなく、クヌギのような細長い葉を持つものやハート型をしたものもあってカエデの仲間とは思えないものも珍しくはありません。カナダの国旗の図案にもなっているサトウカエデに似た葉を付けるものも存在します。
コハウチワカエデは漢字では小羽団扇楓で読んで字のごとく小さい羽団扇楓で、主に中部以北に分布するハウチワカエデに似ているが葉や樹形がより小型のためコハウチワカエデと名づけられたものです。羽団扇は鳥の羽で作られた団扇で、天狗の絵には手に持つ姿がよく描かれます。イロハモミジの葉は切れ込みが深く、繊細でしゃきっとした印象を受けますが、コハウチワカエデ、ハウチワカエデは共に切れ込みは浅く丸みを帯びた優しい感じで羽団扇に例えるのがもっともふさわしいように思えます。
コハウチワカエデは秋が深まってくると全体が真っ赤に紅葉したものや黄色く黄葉したものも見られますが、条件によっては一本の木で赤、黄、紫、橙など色とりどりに色づき、その中には緑の残っているものもあり、さらにはそれらの色が一枚の葉の中でグラデーションとなって色づく光景を見ることがあり、その美しさは他の楓では味わえない美しさです。
27種の楓の名にはそれぞれの特徴が表わされています。この秋の紅葉のシーズンにはその名のいわれと、どんな色に色づくか紐解いてみてはいかがでしょう。
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