菅さん提供
センダン(栴檀 落葉高木 センダン科)
花期5~6月 果期10~11月
秋も深まり木々も葉を落とす冬枯れの季節の里山のところどころでは、黄色っぽい鈴生りの実をつけたセンダンが目を引くようになります。この時期の木の実は鳥たちにとっては貴重なごちそうと思われますが、季節が巡って木々の若葉が萌え出るころになっても実をつけているのを見ることがあります。
実の大きさは長径が17 mmほどの楕円形で果肉は薄く中に硬い核があるため、これを食べる鳥は丸のみできるヒヨドリやムクドリ、ツグミといったやや大きめの鳥のようですが、果柄が長いために枝に留まって実を啄む鳥には食べにくそうです。鳥に種を運んでもらうには食べやすくした方がよさそうに思えますが、そこには一度にたくさんの実を食べてもらうよりも少しずつ食べてもらい、種をあちこちに拡散してもらおうというセンダンの戦略があるように思えます。実には毒があってこれも少ししか食べられないような効果があるのかもしれませんが、民間では生の実をすりつぶしてひび,あかぎれ,しもやけの外用薬として用いられたということです。
センダンの開花は初夏。花は薄い紫色の細い5弁花の直径2㎝ほどの大きさで、一つひとつの花は小さくても枝の先々いっぱいに咲くため、花期には木全体が薄紫色に見えます。
センダンの古名は「楝(おうち)」と言い、日本の伝統色の楝色は淡い紫色のことだそうです。花は、長い葉軸に小さい小葉が広い間隔で何枚も連なって付く葉姿と相まって爽やかな印象があり、清少納言が枕草子で「楝の花 いとをかし(趣がある)」と詠んだというのも分かるような気がします。
「栴檀は双葉より芳し」は、大成する人は幼い頃から優れていることを意味する諺ですが、ある園芸関係者から、センダンには香りが無く、正確には白檀(びゃくだん)のことだと教えてもらったことがありました。
高級材で知られるマホガニーもセンダン科で、センダンも良材としての評価は高いものの、広葉樹は一般に枝分かれして成長するため長い材が採れず用途が限られていましたが、成長が早いセンダンの特徴を活かしつつ真っすぐ育つ手法が近年開発され、いくつかの自治体が植栽を推進し始めているとのこと。香りはなくともセンダンは林業家にとっては実利にかなった樹木と言えそうです。
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