菅さん提供
トチノキ(栃の木 ムクロジ科)
花期5~6月 果期9~10月
9月に入ったとはいってもまだまだ日差しが厳しい中、緑の間を縫うように流れる沢筋の山道を歩くのは心地よいものです。そのような所で見られる樹木にトチノキがあります。
初夏に咲く花の姿は巫女が舞うときに鳴らす巫女鈴(神楽鈴とも)の形に似ていると形容されることがありますが、花よりも丸い実の方がより似ているように思います。ただ、円錐形に咲く花の多くは雄花で、実になる花は円錐下部に少しあるだけのようです。そのため結実しても巫女鈴のようなきれいな円錐形にはなりません。
縄文時代にクリが栽培されていたことは遺跡の発掘で明らかになっていますが、トチノキの実も当時から食料とされていたそうです。現代でも一部の地方では正月には欠かせない伝統食として栃餅作りが行われているようです。
果実の大きさは4~5cmほどで中の種子は3~4cmほど。種子の見た目はどんぐりのようですが、トチノキはブナ科と違ってムクロジ科になるため正確にはどんぐりとは言えないそうです。 葉の形はホオノキに似ていて、手のひらを広げたような掌状複葉と言われる形で、1枚の大きさは大きいものでは30cm近くになります。
ブナ科のどんぐりのクリは渋皮を除けば美味しく食べられます。スダジイやツブラジイ、マテバシイの椎の木類は鬼皮を除けばそのまま炒って食べられますが、栃の実は渋みやアクが強いため1週間ほど流水にさらしたり、天日干しや木灰を加えた熱湯で煮たりとかなりの手間暇が必要とのこと。そこまでして食べるのは美味しいからと言う訳ではなく、昔は穀物が入手しにくい山間部などの土地柄でも入手しやすかったためと思われます。乾燥すれば十年は持つということから、飢饉に備える貴重な食糧としての性格もあったようです。
パリにあるシャンゼリゼ通りはマロニエの花で有名ですが、マロニエは日本名ではセイヨウトチノキ。日本のトチノキの花もマロニエに劣らずきれいです。初夏の山歩きの際に沢沿いのルートではマークしておきましょう。
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