菅さん提供
ジャケツイバラ(蛇結茨 落葉つる性木本 マメ科)
花期5~6月 果期10~11月
初夏の風が渡る濃い緑に覆われた沢沿いの道を歩いていると、黄金色に輝いて見える一角が目に飛び込んできたのがこの花との初めての出会いでした。そこからは、まるで緑の中に明かりが灯っているかのような印象を受けたことを十数年前のことながら今でも鮮明に覚えています。30cm前後の花軸に直径が3㎝ほどの花が多数付き、それが緑の葉の間から何十本も立ち上がっている姿に出会うと壮観です。
花をよく観察すると、5個の花弁の中で上側に位置する1個だけに赤い筋状の模様があり、中央部分から伸びる雄しべを構成する花糸も赤みを帯びているのが見て取れます。
この花に会いに行くとなぜかハナバチの仲間と良く遭遇します。ハナバチの好む何か特別なものをこの花は持っているのかもしれません。
花もさることながら、楕円形の小葉が整然といくつも並んだ姿は見た目には美しいと感じますが、うかつに手を伸ばすと裏側には鋭い棘が並んでいるので要注意です。マメ科にはつるを他の植物に巻き付けて高いところに茎を伸ばすものが多いのですが、ジャケツイバラの棘は葉の裏だけではなく、幹と言わず枝と言わずつる全体に並んでいて、これを他の植物に引っ掛けて高いところに這い上がっていくと言われています。
高い樹木がない草原では高くなることができない代わりに四方八方に枝を伸ばして成長します。棘を引っ掛ける物が周りに無い所では引っ掛けるものを探すかのようにムチのような棘のある細い枝を沢山伸ばします。絡み合って伸びていくその様子を蛇が絡み合う姿になぞらえて蛇結茨の名になったと言われればなるほどなと納得します。
棘は鋭く、服にでも引っ掛けるとなかなか外れず厄介で、ある秋のこと、野原のジャケツイバラにヤマノイモのつるが巻き付き、沢山のむかごが付いているのを見つけて久々にむかご飯が味わえると思い、用心深く手を伸ばしたものの、見事にとげの洗礼を受け、その跡が化膿して痛い目に遭った事がありました。
マメ科の花の多くは蝶のような形をしているため蝶形花と呼ばれますが、ジャケツイバラの花は少し異なります。それでも豆果と呼ぶに相応しい形の実を付けることでマメ科と言うことが分かります。熟すと黒っぽい豆が顔を出します。この豆には下痢止めの薬効があるそうです。若い実はさやえんどうに似て食べられそうですが、薬と毒は裏腹の関係にありますので口にはしないほうが賢明でしょう。
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