クサイチゴ (草苺 落葉低木 バラ科)
花期4月 果期5~6月
クサイチゴは草と名が付いていてもれっきとした樹木で、棘のある姿を見るといかにもバラ科であることを
思わせます。やや湿った環境の林縁や明るい藪の中などで地下茎を伸ばして群生しているところがよく見られ、
丈は伸びても50~60cm止まりのところから草と思われたのかもしれません。
花は俳句では春の季語になっていて、その花は丈に似合わず差し渡しが3cmを超えるような大きさがあり、
白い花が一面に広がる光景は目に映えます。そのようなところから春の季語となったものでしょう。一方の果
実は初夏の季語になっており、真っ赤に熟した果実が緑の中であちらこちらに点在する様子を目にすると、い
くつもある野いちごの中でももっとも野いちごらしいという印象を受けます。
この赤い果実が目に入ると思わず手が伸びて口にしてしまい、後で写真に収めておけばよかったと思うこと
がしばしばで、それほどに野いちごの中では酸味もなく程よい甘さに加えジューシーで風味もよく、黄色い果
実が付くナガバモミジイチゴと並ぶ美味しさで、子供のころに近くの野原に摘みに出かけたのは懐かしい思い
出のひとつです。当時は今のような便利なプラスチックの容器などなく、アルミの弁当箱を携えて摘みに行っ
たものでした。
“野いちご野いちごだよ美味しい実だよ”といちごを摘みながらその当時姉が口ずさんでいた歌を今になっ
て調べてみると、フィンランドの民謡が元になっているようで昔の教科書に載っていたようです。
果実の大きさは1cmほどと花の大きさに比べると小さいもので、さらに内側は中空になっていてあまり食
べごたえはありません。それでも美味しさの誘惑に駆られて藪漕ぎをすることになります。中空になっている
せいか、ちょっと触れるだけで完熟したものはポロンと落ちるので摘むときはそっとつまむようにします。甘
いものには目がない小さい蟻が先客として中に入っていることがままありますので食べる前には要注意です。
このいちごを鍋いちごと呼ぶ地方があるのは、中空になった形が丸い鍋のように見えるところから来ているよ
うです。
余談になりますが、市販されているいちごは花の土台部分の花托(花床とも)が肥大化したもので、クサイ
チゴとは実の造りが異なります。
一つと言うことでそれほど気になるものではありません。
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