菅さん提供
キブシ(木五倍子 落葉低木 キブシ科)
花期:3~4月 果期:10~12月
木々の冬芽を覆って寒さや乾燥から守るという鱗状の芽鱗を脱ぎ落し、緑の若葉が顔をのぞかせる早春の山道を歩いていると、キブシの花に出会うことがあります。キブシは細い幹が何本も出て株立ち状になるのが特徴的な落葉低木で樹高は3~4m。幹からは何本もの細い枝が出て、その枝先いっぱいに黄色い花が暖簾を吊り下げたような状態で咲くのでよく目に留まります。花の大きさは6〜7mmほどの長さで、開いても4枚ある花弁は重なり合ったままで、満開状態でも丸っこいのでブドウの房のような花とも玉すだれのような花とも形容されます。別名の黄藤も藤の花のような花序の形から来たと言われればそのようにも見えます。花の少ない時期ということもありますが、枝という枝にいっぱいの花を付けているさまを見るとまさに壮観。
雌雄異株で雌株の花はやや緑色を帯びていて、房の長さも雄株のものより短めです。ごくまれに赤味がかった花を付けている株に出会うこともあります。
花の後には直径10mmほどの球形の果実ができます。花がブドウの房のようだったことから果実もブドウの房に見えますが、残念ながらタンニンが多く渋くて食べられません。花はおひたし、天ぷらにして食べることができるそうで、その味はほろ苦く春の味わいだそうです。
キブシは漢字では木五倍子。五倍子(フシ)はウルシ科のヌルデにできる虫こぶのことで、乾燥させて粉にしたものを鉄分と反応させると黒い染料になり、昔の人はこれを歯に塗って「お歯黒」としたそうですが、キブシの名の由来は、ヌルデの五倍子の代わりに果実を利用したためと言われています。
お歯黒の黒い色はタンニンが関わっていますが、キブシがヌルデの代わりになると気づいた人は、黒い小さなアブラムシがウジャウジャ詰まったヌルデの虫こぶをかじってみてひらめいたのでは?それはさておいても、昔の人の創造力には感心させられますね。
春になると桜の開花の話題で持ちきりになりますが、山に入ればキブシをはじめコバノミツバツツジ、タムシバ、アセビなど早春の花との出会いを楽しむことができます。
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