菅さん提供
キジョラン (鬼女蘭 常緑藤本 キョウチクトウ科)
花期8~10月 果期11月
蘭と言えば胡蝶蘭に代表される気高く高貴な印象のある花を思い浮かべますが、世の中には何とも恐ろしい名を持つ蘭があります。その名はキジョラン(鬼女蘭)。とは言っても蘭とは無縁の多年草扱いされることもある常緑のつる植物で、大きく成長すると木質化するため半低木とも言われていて、直径4mmほどの黄色味を帯びた白い花をつけます。花は小さいながらもかすかに芳香があるそうです。
果実は花と比べると意外と大きく、14cm前後のマンゴーを思わせる袋果(袋状の果実)を付けます。熟すのは花が咲いた翌年の秋以降で、中には多くの種子が収まっていて、袋果が裂開するとタンポポの種子のように風に乗って飛んでいきます。一つの種子は1cmほどの大きさで、風を受ける種髪と呼ばれる長くて白い毛がたくさん付いていて、この白い毛が広がったようすを、白髪を振り乱した鬼女に見立てて鬼女蘭の名になったそうです。蘭は何を意味するのか由来等についてはよく分かりません。
鬼女と言われても恐妻家には家のカミさんのことかと思ったりもしますが、種髪を何かに例えるなら、生地で毎年執り行われ、子供のころから見慣れている神楽に登場する力持ちの神様で、天照大神が隠れた天岩戸を押し開く手力雄命を挙げないわけにはいきません。鬼と見紛う面相で舞い踊るその姿は、鬼女のイメージと重なるところもありますが、神様の方が有難みがあります。
多くの人にとってはなじみのない植物と思われますが、千キロ以上も旅をすることで知られるアサギマダラの幼虫の食草として、愛蝶家の間では広く知られているようです。越冬する幼虫は完全な休眠状態ではなく、少しずつ葉を食べながら越冬するとか。
あまり羽ばたかずゆったりと優雅に舞い、それでいてたくましいアサギマダラ。この美しい蝶に多くの植物が葉を落としている冬場にも食料を提供し、芳香のある花を咲かせるキジョランには鬼女ではなく貴女の名を充てたくなります。
ところが、長距離飛行できるのは、食草が持つ毒を取り込んでいるために外敵に捕食されることが少ないことによるものとも言われていて、毒を持つとなると鬼女でもいいような気もします。
※手力雄命の写真はMORIMORI様のご好意によりPhoto Miyazaki 宮崎観光写真(https://www.pmiyazaki.com)より拝借しました。
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