菅さん提供
ヤマヤナギ (山柳 落葉低木 雌雄異株 ヤナギ科)
花期3月 果期5月
柳と言えば柳に風の言葉があるように水辺で風に枝がそよぐシダレヤナギをまず思い浮かべます。
もうひとつよく知られた柳にネコヤギがありますが、こちらは完全に水と密接な関係を持っていて、山間部の渓流や中流域の流れが速い川辺に生育する柳です。
一方で水気の無いような山中でも生育している種類も幾つかあります。ヤマヤナギもその一つで、ヤマと名が付くのも、柳は水辺の樹木と言う概念があってのことと思われます。
柳の仲間は国内に自生するものだけで30種以上はあると言われ、その中の17種が細長い葉のいわゆる柳葉で、残り13種ほどは楕円形または広楕円形の葉を付け、ヤマヤナギは後者の葉の形をしています。
バッコヤナギ(ヤマネコヤナギ)やジャヤナギは樹高が10m以上にもなる大木になりますがヤマヤナギの樹高は3m前後の低木です。
柳の多くは3月から4月初頭にかけて開花するものが多く、桜に先駆けて春を告げる樹木の一つですが、春を演出する生け花の素材として扱われることがあっても桜のような花見の対象となるような華やかな花ではありません。それでも万葉集には春の季節に柳の花を詠ったものが数種あるそうです。柳は雌雄異株でどの種も雄花雌花共に地味な花ですが、万葉人の感性は現代人以上に豊かだったということでしょうか。
花は小さい花が多数集まって動物のしっぽのような形になったいわゆる尾状花序と言われるもので、花弁が無いために目立たたないので地味に見えるわけですが、このような花の形状は風媒花に多く見られる特徴です。
ところがほとんどの柳の花には蜜を出す腺体が雄しべや雌しべの基部にあって虫媒花だそうで、ずっと風媒花の花とばかりに思い込んでいました。
棘がいくつも集まったような形の果実は熟するとその一つひとつが先端から裂開して綿毛を持った種子が飛び出します。この種子のことを柳絮と言い、風に乗って舞うさまを柳絮舞う、あるいは柳絮飛ぶと表現して春の季語にもなっているようです。
柳絮が風物詩になっているところはいくつかあるようで、上高地もその中の一つで果期の異なる数種類のヤナギが次々に綿毛を飛ばす光景が初夏から8月終わりごろまで続くそうです。
シダレヤナギの柳に風は相手に逆らわず受け流してあしらうことを表現したものですが、どの柳も種を飛ばす時だけは風の恩恵にあずかっているようです。
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