タムシバ (田虫葉 落葉高木 モクレン科)
花期3~4月 果期10月
暖かい日差しが心地よく感じられるようになる3月の半ばを過ぎてエドヒガンの蕾が膨らみ始めるころ、タムシバの固かった蕾も動き出してきて、山肌の南側の斜面では4月の声を待たずに白い花が見られるようになります。早春の青空を背景に10cmほどもある大きな花の姿を見るのは壮観です。
タムシバとよく比較される花にコブシの花があります。一目では区別がつかないほどよく似た花同士ですが、花の基部付近を見れば容易に判別がつきます。そこに小さい葉が一枚ついていればコブシ、無いのがタムシバです。どちらの花にも良い香りがあって、そのことからタムシバはニオイコブシ(匂辛夷)とも言われます。
タムシバの匂いの成分は枝葉にも含まれていて、ほのかな甘みが感じられてメントール味と表現されることもあります。メントールには殺菌、抗菌作用があることから、股間に罹患する “いんきんたむし”の治療にタムシバを使っていたことでタムシバの名になったのではと勝手な解釈をしていましたがそうではなく、「噛む柴」が転じてタムシバになったと言われています。昔は子供が飴代わりにしゃぶったり、大人でも清涼感で疲れを癒すのに仕事の合間に噛んでいたのかもしれません。
10月ころに熟す果実の初期は鱗が並んだような形でパイナップルに似ています。成熟してくると鱗状の一つひとつがこぶのように膨らんできてやがて破れ、そこから赤い種子が現れます。白く清楚な花からは想像できないちょっとグロテスクな果実の姿ですが、そのように捉えるのは人間の勝手だけで、タムシバやこれをごちそうとする動物にとってはあずかり知らぬことでしょうね。
木全体
花のアップ
実
0 件のコメント:
コメントを投稿