菅さん提供
クコ(枸杞 落葉小低木 ナス科)
花期7~8月 果期翌年8~12月
暑さも和らぎ、秋の気配が感じられるようになった8月の山歩きで、人里に近い林縁の草むらで細く枝垂れた枝に薄紫色の花をいくつも付けたクコが目に留まりました。
クコは日当たりを好む強健な植物で、川の土手や河原、海岸の砂地が主な繁殖地のため、深い山では見ることはありません。
クコの木を目にしたことのない人でも、赤い実は中華料理によく使われる食材ということで、口にしたことがある人も多いのでは。
直径が1㎝あまりの花はナスの花によく似ていますがそれもそのはず、クコはナス科の落葉低木に分類されています。楕円形の実は、長さは1~1.5cmほどとナスに比べるとかなり小さいですが、生り口のへたの形はナスとそっくりな形をしています。
身近で食卓を賑わすトマトやジャガイモ、トウガラシなどはどれもナス科で、南米から中南米が原産地で古くに日本に伝わってきたものですが、クコは中国が原産地と言われています。その中国では宋の時代から不老長寿の妙薬として珍重され、美女の誉れ高い楊貴妃も美しさを保つために毎日食していたとか。
赤い実は実際に美容効果やアンチエイジングの効果があるとされ、ゴジベリーと称されて、スーパーフードとして海外でも人気が上がってきているようです。
実だけではなく柔らかい葉や若い茎も利用できます。クセがないので和え物やお浸しにしたり、炒め物やスープの材料にも重宝です。
また、漢方の生薬として実はもちろんのこと、葉や根も利用されているようです。熟した実はジューシーで美味しそうに見えますが、甘味はなく美味しいものではありません。市販のものは十分に乾燥されたドライフルーツのようで、そのままでも食べられほのかな甘みが感じられます。
赤い実は冬にも見られるので鑑賞目的と実益を兼ねて拙宅の空き地に植えたところ、とんでもないことになりました。細い枝は上には伸びず、横に這ってその先が地面に接したところで根を生やし、そこからまた枝が伸びて猛繁殖。ある年にはクコの葉に付くトホシクビボソハムシ(十星首細葉虫)という害虫にもやられましたが、これがまたとんでもなく汚い虫で、幼虫は外敵対策なのか、尻から出した粘液と自分の糞を混ぜ合わせたものを体にまとい、見た目は小さな黒いナメクジの様で、虫が接した家の白い壁も、お隣の白い車も黒く汚れてやむなく引き抜くことにしましたが、茎には鋭い棘もあって文字通り痛い目に会いました。
赤くかわいい実と、小低木の名に釣られて狭い敷地にこの木を植えるのは考えものです。
クコの花

