菅さん提供
クスノキ(楠・樟 常緑高木 クスノキ科) 花期
花期4~5月 果期10~12月
5月初旬の立夏のころのこと、山道を歩いていると足下に季節外れの紅葉した落葉が一面を覆っている光景に出くわしました。見上げると新しい葉をつけたクスノキが枝を広げていました。
クスノキは春に新しい葉が出ると同時に前年に出た古い葉が落葉するため、樹木全体がみずみずしく美しい新緑に覆われたようになります。この時期のクスノキの若葉を象徴する初夏の季語として扱われるのが楠若葉(くすわかば・樟若葉)です。同様に落葉は楠落葉(樟落葉)といわれます。ちなみにクスノキを含めて晩春に古い葉を落とす。椎の木や樫の木などの常緑樹の落葉を称して春落葉が季語として扱われます。
6月に入ると楠若葉も緑の濃さを増していかにも常緑樹という体をなしてきます。葉は基部から3本の太い葉脈が伸びる三主脈、あるいは三行脈とも呼ばれる特徴的な形状をしています。
花は直径5mmほどの黄緑色で、一つひとつの花は目立ちませんがまとまってつくため花の時期にはそれと分かります。果実は晩秋に黒柴色に熟し多くの小鳥たちの好物となります。
生長すると20m以上にもなるクスノキは神社でよく見かけることがあります。日本には天高くそびえ立つ木に神が降臨するという思想があることと、清涼感のある強い香りは人をリラックスさせる効果があり、厄除けの霊木として御神木にされてきたものと思われます。
香りの成分は樟脳として古くから防虫剤として利用されてきた歴史があります。果実から採れるように思われますが実際は材を細かく砕き、それを蒸し器で蒸して発生する蒸気を冷やして樟脳成分を取り出します。
柔軟剤や香水、合成洗剤などに含まれる合成香料が原因で、頭痛や吐き気、不快感などの健康被害が「香害」として近年問題になっていますが、樟脳の成分は衣類を風や天日にさらすことで比較的速やかに臭いが消える性質があるとのことで、昨今樟脳の良さが見直されているようです。
三主脈の分かれ目にダニ室と呼ばれる1mmほどのふくらみがあればそこにはある種のダニが潜んでいます。葉にも樟脳の成分は含まれていますが中のダニには殺虫効果はないようです。このダニにとっては樟脳成分は蓼食う虫も好き好きと言うことになるのでしょうか。なお、葉をちぎって香りを楽しむことがあっても、中のダニは人には害がありませんので念のため。


