菅さん提供
タラヨウ (多羅葉 常緑高木 モチノキ科)
花期5~6月 果期11~12月
タラヨウとはどんな樹木でしょう。郵便局と縁のある木と言えば思い当たる人もいるかもしれ
ません。
暖地性の樹木で自然分布は静岡県以西と言われていますが、山歩きで見かけることはごく稀で
す。葉は肉厚で長さが15~20cmほどもあり、四季を通して青々とした照葉樹ですが、照葉
樹林の多くが人にとって有用なクヌギやコナラなどの落葉樹に取って代わられたことや開発など
で失われたことが他の照葉樹のシイなどと同様にタラヨウが少ない一因と思われます。
タラヨウは葉書と深い関係にあります。古く平安時代にタラヨウの葉に傷をつけて文字を書い
たことがはがきの語源と言われ、肉厚で手ごろな大きさがあり、しかも傷をつけるとその跡が見
る間に黒く変色するので、この木の葉は文字を書くにはうってつけだったというわけです。
黒くなるのは細胞内の酸化酵素が空気に触れて酸化することによるものだそうで、数十年経っ
ても読み取ることができるそうです。そのようなことで郵便局のシンボルツリーとしてはがきの
木とも呼ばれ、玄関わきなどに植栽されているのを目にすることがあります。
タラヨウの漢字は多羅葉と書き、この羅の字から羅漢像が思い浮かび、次に平家物語の冒頭の
一節に出てくる沙羅双樹と続き、何か仏教と関わりがあるのではとひらめいて調べました。分か
ったことは、古代インドではお釈迦様の教えをターラというヤシ科の葉に刻んで残したそうです。
ターラの木は多羅樹と書き表すので同じように葉に文字が書けることから多羅葉としたとか。
タラヨウは寺社に植えられている所もあるようです。その訳はインドで葉に経文を記したこと
とも関係はありそうですが、もうひとつ大きな理由として、葉を火であぶってできるリング状の
黒い環(死環)を占いに用いた歴史があるようです。
タラヨウはモチノキ科で、同科の特徴には雌雄異株で花が極めて小さいことが挙げられますが
タラヨウも例外ではありません。樹皮からトリモチが採れる点も同様で、実の付きっぷりも見事
で冬場にはよく目を引きます。
今でもタラヨウの葉に宛先を明記し、定型外の切手を貼れば実際に郵送することも可能だそう
ですが、平安人はこの葉に何を書き記したのでしょう。和歌や恋文だったのでしょうか。葉が手
に入れば平安人に思いを致して一筆したためてみるのも一興かも。
タラヨウの実
タラヨウ 雌花
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